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サニースタッフブログ

創意工夫で切り開く —— 精密スリット加工の楽しさと奥深さ

2025-02-14
スリット係のFです。
今回は、私たちが行っている「精密スリット加工」についてご紹介します。弊社工場では、シール・ラベルの製造と併せてスリット加工も行なっています。スリット加工では、金属やフィルムなど様々な材質を取り扱うため、技術面での工夫やオリジナルの治具開発が欠かせません。今回の記事では、精密スリット加工の基礎から現場で起こる課題やその解決策、そしてものづくりの楽しさまでお伝えできればと思います。
精密スリット加工とは
精密スリット加工は、お客様から支給されたロール状の材料を指定された幅に正確に切断する加工技術です。300mmの材料であれば、1mmから250mm程度の幅にスリット可能です。取り扱い材料は、樹脂や金属、複合材など多岐にわたります。例えば、精密電子部品向け材料や航空機部品に使用されるチタン材など、精度の高いスリットが必要とされる製品に幅広く対応しています。お客様との守秘義務などもあり、あまり詳しい用途やユーザー名などはお伝えできないのですが、おかげさまで、弊社は誰しも知る大企業の重要部品の加工を任せていただいています。
現場で起こる課題とトラブル
精密スリット加工で頻繁に直面するのが、巻取りに関する課題です。スリット幅が細くなるほど、ガイド(巻取りを補助する治具)を使用できなくなったり、テンション(巻取り時の張力)の調整が難しくなったりします。
例えば、極端に細い幅で巻き取る場合、通常のコアではなく専用のコアやリールが必要になります。さらには、テンション(張力)の設定、調整等が必要となります。テンションが強すぎると切断面が荒れてしまい、逆に弱すぎるとたるんでしまうため、常に最適なバランスを保つことが欠かせません。精密スリット加工においては、「切断すること」よりも「適切に巻き取ること」の方が難しいです。
これまでで最も難しかった課題
過去には、0.775mmというごく細幅でのスリット加工の案件がありました。これが過去最も難しい課題だったと思います。先述した通り、スリット幅が細くなればなるほど設備上の制約が設けられてしまうため、加工の難易度が急激に上がります。スリット幅が1mm以下にもなると、通常通りスリットを行なっても、材料が刃へ巻き込まれてしまい、巻き取ることが出来なくなってしまいます。本件でも、特殊な治具の開発が必要不可欠でした。そこで私は治具の制作、刃の滑りをよくするための特殊な装置の設置など、考え得る不具合を想定して、試作を重ねました。不具合の発生時には、原因を潰し込む作業を徹底して繰り返しました。こうした努力の結果、安定供給が可能になり、その後何年にも渡ってご発注をいただくことができました。地道な努力が実り、何物にも代えがたい達成感を感じたことを覚えています。
スリット加工の現場では、常に新しいアイデアが求められます。必要なものは治具から自作し、テストを重ねて改善。最終的にお客様のご要望を満たす製品に仕上げる・・・この一連の流れが醍醐味です。「こうしたらどうだろう」「次はこうしてみよう」といった仮説と検証の繰り返しがものづくりの楽しさそのものです。大手企業のように資金や人材が潤沢ではないからこそ、創意工夫で課題を解決していくというプロセスを楽しむことが出来ます。自分が工夫した治具や方法によって課題を解決し、実際に製品として出荷できると、やはり大きな満足感、達成感が得られます。

他社にはない強み
当社の大きな強みは「異種材料(複合材料)の貼り合せからスリット加工までを、同じ工場内で一貫して対応できる」点にあると思います。例えば、金属とフィルムを貼り合せた後、そのまま同じラインでスリットまで仕上げることが出来ます。これにより、リードタイムと品質管理の面で大きなメリットを提供できるのが特徴です。
今後の展望
今後は、より一層の精密化を目指して、1mm以下の超細幅スリットにも積極的に取り組みたいと考えています。材料が薄すぎたり厚すぎたりすると、より高度な刃物、治具の選定や、加工条件管理が必要になりますが、その分やりがいも大きいです。「どんな材料でも、仕様通りに正確に切る」――この目標に向けて、さらなる技術開発とチャレンジを続けていきたいと思っています。
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