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シール・ラベルの粘着力試験とは|ボールタック・180°剥離・保持力の測り方とデータの読み方

技術コラムアイキャッチの画像(ラベル・部品の貼付を自動化するには)
「データシートに『ボールNo.12』『12N/25mm』と書いてあるが、強いのか弱いのか分からない」「カタログ値どおりに選んだのに現場で剥がれた」「客先から粘着力の根拠データを求められた」・・。

粘着剤の性能は目に見えないため、シール・ラベルの世界では試験値が共通言語になります。ところが、試験の中身を知らないまま数値だけを比較すると、「数値は良いのに実使用で剥がれる」「必要以上に強粘着を指定してコストと糊残りに悩む」といったすれ違いが起こります。

この記事では、粘着剤の試験機を社内に保有するラベルメーカーの立場から、JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)に基づく代表的な3つの試験「ボールタック試験・180°剥離試験・保持力試験」の測定方法や、それぞれの結果の読み方、そして試験値と実使用条件のギャップをどう埋めるかを実務目線で解説します。

この記事の要点

  • 粘着力は1つの数値では表せない。「貼った瞬間(タック)」「剥がす力(接着力)」「ズレにくさ(保持力)」の3試験で別々の性質を測る
  • ボールタック試験はボールNo.が大きいほどタックが強い。剥離試験はN/25mmで表し、時間経過とともに数値が上がる
  • カタログの試験値はステンレス板・23℃の標準条件での値。実際の被着体・温度では性能が変わるため、数値の比較だけで採否を決めない
なお、アクリル系・ゴム系・シリコン系という粘着剤の種類ごとの特性と選び方は、別記事「ラベル用粘着剤の選び方」で解説しています。本記事はその「評価・試験編」として、数値の測り方と読み方にフォーカスします

数値で迷ったら、実物で確かめてください



※試験値はあくまで標準条件での目安です。最終的な判断は、実際の被着体・実際の環境での貼付確認が確実です。候補となる粘着剤のサンプルラベルをご用意しますので、現場でお試しください。用途をお聞かせいただければ、比較検討しやすい組み合わせでご提案します。

粘着力試験とは|3つの試験で「粘着の異なる側面」を測る

剥離試験の様子
粘着力試験とは、シール・ラベル・粘着テープの粘着性能を、JIS Z 0237(粘着テープ・粘着シート試験方法)などの規格に沿った条件で数値化する試験です。粘着の性能は単一の数値では表せないため、性質の異なる複数の試験を組み合わせて評価することが多いです。
代表的な3試験と、それぞれが測る性質は次のとおりです。
試験測る性質一言でいうと代表的な表記
ボールタック試験タック
(初期接着力)
貼った瞬間のくっつきやすさボールNo.
(例:No.6)
180°剥離試験接着力
(剥離強度)
貼ったあと、剥がすのに要する力N/25mm
保持力試験保持力
(凝集力)
荷重をかけたときのズレにくさズレ量(mm)
/落下までの時間
重要なのは、3つの数値は連動しないことです。タックが高くても保持力が低い粘着剤、剥離強度は高いがタックの立ち上がりが遅い粘着剤は普通に存在します。「粘着力が強いラベル」という言い方は、この3つのどれを指すのかを特定しないと、メーカーと発注者の間で認識がずれてしまいます。

ボールタック試験|「貼った瞬間のくっつき」を測る

ボールタック試験
ボールタック試験とは、傾斜させた粘着面に鋼球を転がし、停止する球の大きさでタック(初期接着力)を評価する試験です。JIS Z 0237に規定される傾斜式ボールタック法では、傾斜角30°の台に粘着面を上にして試験片を固定し、大きさの異なる鋼球を転がします。

ボールNo.が大きいほどタックが強い

鋼球にはサイズごとに番号(ボールNo.)が付いており、測定部で停止した最大の球の番号がそのままタックの評価値になります。番号が大きい=重い球でも止められる=タックが強い、と読みます。

例えば技術データシートに「ボールタック:No.6」とあれば、「No.6の鋼球を止める程度の初期接着力がある」という意味です。目安として、仮止め・再剥離用途の弱粘着では小さい番号、貼った直後から密着が必要な用途(自動ラベラーでの高速貼付、貼付直後に搬送・積み重ねが発生する工程)では大きい番号が求められます。

タックの数値で判断できること・できないこと

ボールタックは「貼る瞬間」の性能を表す指標であり、長期の接着維持力は分かりません。逆に、貼り直しを前提とする工程用ラベルでは、タックが高すぎると位置修正ができず作業性が落ちます。「強いほど良い」ではなく、工程に合った番手かどうかで読むのが正しい使い方です

180°剥離試験|「剥がすのに要する力」を測る

180度剥離試験機
180°剥離試験とは、標準板(ステンレス板)に圧着した試験片を180°方向に一定速度で引き剥がし、要した力を測定する試験です。結果は試験片幅あたりの力(N/25mm)で表され、一般に「接着力」「剥離強度」と呼ばれる数値はこの試験によるものです。

数値・測定タイミング・被着体の3点セット

数値が大きいほど剥がすのに力が必要=強く接着している、という読み方自体はシンプルです。ただし実務では、数値単体でなく次の2点を必ず併せて確認してください。

  • 測定タイミング:粘着剤は貼り付けてから時間が経つほど接着力が上がります(特にアクリル系は立ち上がりが遅い)。「貼付直後」と「24時間後」では数値が大きく変わるため、データシートのどちらの値かを確認する
  • 被着体:カタログ値は原則としてステンレス板での測定値です。実際に貼るのがPPやPE、塗装面、粗面であれば、同じラベルでも数値は大きく変わります

弱粘着ラベルは90°剥離で測ることもある

当社では180°剥離試験機を主に使用していますが、粘着力の弱い再剥離タイプでは180°では安定した測定結果が得られないため、90°剥離試験機を使い分けています。データシートを比較する際は、剥離角度(90°か180°か)が揃っているかにも注意してください。角度が違う数値同士は単純比較できません。

保持力試験|「ズレ落ちにくさ」を測る

保持力試験
保持力試験とは、被着体に貼り付けた試験片に一定の荷重(静荷重)をかけ続け、ズレ量や落下までの時間で凝集力を評価する試験です。タックや剥離強度が「面に垂直・剥がす方向」の性能なのに対し、保持力は「面に平行・ずれる方向」の性能を表します。

保持力が効いてくるのは、次のような場面です。

  • 垂直面・天吊り面に貼るラベル(自重でずり落ちる)
  • 曲面貼付(ラベルが元に戻ろうとする反発力が働き続ける)
  • 高温環境(粘着剤が柔らかくなり、凝集力が低下する)

タック・剥離強度が十分でも、保持力が不足すると「貼った直後は問題ないのに、数日後に曲面の端からめくれてくる」という典型的なトラブルになります。曲面・高温用途では、剥離強度だけでなく保持力のデータ(または実物での曲面貼付評価)を確認してください。

データシートの数値と実使用が食い違う理由

結論、試験値は「標準条件での比較用の数値」であり、実使用環境での性能を保証する数値ではありません。試験どおりに選んだのに剥がれた、というケースの多くは、以下の表にある項目が原因です。
項目試験の標準条件現場で起こりがちな条件
被着体平滑なステンレス板PP・PE(低表面エネルギー)、塗装面、粗面、離型剤残り
温度・湿度恒温恒湿室(常温)冷蔵・冷凍、高温の装置周辺、屋外の温度サイクル
表面状態清浄・乾燥油分・粉塵・結露・霜
貼付圧・時間規定の圧着条件手貼りの軽い圧着、貼付直後に次工程へ
形状平面曲面・凹凸・エッジまたぎ
とくに影響が大きいのが被着体の違いです。ステンレス板で15N/25mm出る粘着剤が、無処理のPP容器では数分の一しか出ないことは珍しくありません。データシートの数値は「同じ条件で測った他グレードとの相対比較」に使い、採否の最終判断は実物での試験に委ねる——これが試験値の正しい使い方です。

現場ですでに剥がれが起きている場合の原因切り分けは、「シールが剥がれる原因と対策」で詳しく解説しています。

その数値、御社の被着体でも出ますか



PP容器、塗装面、冷凍環境——条件が変われば結果は変わります。被着体と使用環境をお聞かせいただければ、候補となる粘着剤のサンプルラベルをご用意します。実際のワークに貼って確かめたうえで、ご判断ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 90°剥離と180°剥離の数値は比較できますか?
Q. 試験値が同じなら、別メーカーの粘着剤に置き換えても大丈夫ですか?

まとめ

  • 粘着力は「タック(ボールタック試験)」「接着力(180°剥離試験)」「保持力(保持力試験)」の3つの試験で、それぞれ別の性質として測る
  • ボールタックはNo.が大きいほど強い。剥離強度はN/25mmで表し、測定タイミングと被着体をセットで読む。弱粘着は90°剥離で測る場合がある
  • 試験値は標準条件(ステンレス板・常温)での比較用の数値。実使用の被着体・温度・表面状態では性能が変わる

数値ではなく、実物で決めましょう

被着体・使用温度・貼付期間——条件をお聞かせいただければ、候補となる粘着剤をご提案し、サンプルラベルをご用意します。「どの数値を見ればいいか分からない」という段階のご相談でも構いません。下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。

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